紀元前3世紀~
ローマ帝国下のアレクサンドリアおよびアテナイ
プロティノス
宇宙の根源は「一者(ト・ヘン)」という、言語・理性を超えた完全で純粋な存在であるとする
一者から知性(ヌース)、魂(プシュケー)、物質世界へと階層的に存在が「流出」する
魂は物質界で堕落しているが、哲学と観想によって一者への再統合(還帰)を目指す
物質世界は影にすぎず、真実の世界は知性の中にあるとするイデア論の継承深化
論理的知識だけでなく、神秘的な直観・体験によって一者と合一することが目標
プラトンの断片的な教説を、形而上学・倫理学・神学の体系として整理・統合した
キリスト教神学、イスラム神秘思想(スーフィズム)、中世スコラ学に深い影響を与えた
外界よりも精神世界を真実とする「内面的探究」の思想は、近代の自己探求の出発点となる
哲学を論理ではなく霊的体験と結びつけた点で、理性と信仰の架け橋ともなった
全存在の源であり、絶対的・超越的な存在。存在すら超える”存在以前”の存在
一者から知性・魂・物質へと順次「減衰的」に存在が流れ出す過程。想像ではなく流出である点が重要
イデアの世界における知性存在で、一者に次ぐ高次の存在。純粋思考そのもの
魂が自己を清めながら上昇し、再び一者に合一する過程。内面の浄化と哲学的努力を通じて達成される
直観的思惟によって高次の実在を認識する行為。知性を超えて「見る」精神的体験
ローマ帝国末期の宗教的混乱と、古典哲学の衰退の中で、人間の精神的救済や宇宙の統一的理解を求める傾向が高まった。
このような時代にあって、プロティノスはプラトンのイデア論を出発点に、より内的・宗教的な体系を築いた。
神秘性と論理性を融合し、哲学を通じて魂の救済を果たそうとする思想は、異教・ユダヤ・キリスト教世界すべてに深く根を下ろすこととなった。